連載「農家、EVを考える」第1回 EVは本当に環境に優しいのか?

時事・企業分析

環境にやさしい最先端のEVですが、実は環境に優しくないんじゃないか?むしろ負荷がかかっているのではないかと様々な議論があります。私なりにEVについてまとめたものを「農家、EVを考える」と題し全6回の連載で掲載していきたいと思います。第1回は「EVは本当に環境に優しいのか?」です。結論から言うと、製造から廃棄まで通して見れば、多くの条件でEVのCO2排出はガソリン車より少ないです。ただし日本ではその差が小さく、ハイブリッド車とはほぼ互角という結果もあります。

製造から廃棄まで通して考えるというのは新しい機械を入れるときに「これは何年で元が取れるか」を考えるのに似ています。EVの環境論争も、実は同じ発想で整理すると分かりやすくなります。

「作るときに汚す」は事実

EVは製造段階でガソリン車より多くのCO2を出します。その大半がバッテリーです。

  • バッテリー製造は1kWhあたりおおむね60〜100kg-CO2(概算)
  • 60kWhのバッテリーなら4〜6トン前後
  • 車両全体ではガソリン車の1.5〜2倍程度が目安

つまりEVは、最初に「環境の借金」を背負ってスタートする車です。大型機械を借金で買うのと似ています。

走れば走るほど借金が返せる

その借金を、走行時の低排出で返していきます。回収スピードを決めるのは「その国の電気の作り方」です。

地域電源の特徴EVの優位性
北欧・フランス再エネ・原子力が中心大きい。数万kmで逆転
欧州平均中程度生涯でガソリン車の3〜4割程度
日本火力が多いガソリン車には勝つが、HVとは接戦
石炭依存が高い国石炭中心差はかなり小さい

国際エネルギー機関(IEA)などの分析では、世界平均でEVの生涯排出はガソリン車のおおむね半分とされています。ただし前提条件で数字は大きく変わります。

日本では「相手が強い」

日本の特殊事情は、比較相手がハイブリッド車になりやすいことです。大容量バッテリーの大型EVだと、10万km以上走らないとハイブリッドに勝てないという試算もあります。逆に、小型で小容量バッテリーのEVなら、日本でも比較的有利です。

農機具と同じで、「自分の使い方に対して大きすぎる機械」を買うと元が取れません。

廃棄より重い「採掘」の問題

バッテリーの廃棄そのもののCO2は、全体から見ると大きくありません。リサイクル技術も進み、車で使い終わった電池を家庭用・業務用の蓄電池として再利用する動きもあります。

むしろ重いのは、CO2以外の負荷です。

  • コンゴのコバルト採掘をめぐる児童労働
  • 南米のリチウム採掘による水資源への影響
  • インドネシアのニッケル開発による森林破壊

中国でも採掘に際する環境汚染が住民の健康被害につながっているという指摘があります。コバルトやニッケルを使わないLFP(リン酸鉄)電池の普及で、一部は緩和されつつありますが農業でも水の確保は死活問題なので、砂漠の地下水を汲み上げるリチウム採掘の話は他人事に思えません。

まとめ

  • CO2だけ見れば、長期・世界平均ではEVが有利
  • 日本で、短距離しか乗らず、大型EVを選ぶと、HVと大差ないか負けることもある
  • 鉱物資源の採掘負荷はEV特有の本物の課題
  • 電源の脱炭素化とリサイクルが進むほど、EVの優位は広がる

次回は、「それならなぜEVは思ったほど売れていないのか」を、自動車メーカーの巨額減損から読み解きます。

※数値は複数の研究による概算で、前提条件によって幅があります。

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